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水田宗子

幕間

2017/08/17

友人や恋人など、最も身近にいて信頼していた者を裏切るのは、裏切りの中でも最悪の行為、人間として最も罪の重い行為とされる。友情や愛はそれ自体犯されざる人間の条件である。先の2映画作品ではその裏切りは法によって罰を受けるが、法も社会組織も裁けない裏切りの中核をこれらは形成している。漱石の「こころ」は友情を裏切る物語で、裏切った者の人間的な苦悩を描く。同時に信頼していた親族から裏切られたことへの怒りと復讐心、それらとの内的葛藤を描く。ここでも嫉妬と裏切りを触発するのは女である。女が二人の友人の間で、曖昧な態度を示し続けることは、誘惑の手練手管の一つでもあるが、その女は「お嬢さん」としてその無垢を汚すことなく保ち続けるのが、男の友人間の裏切り物語の一つのパターンでもある。女は男を裏切っても、裏切らなくても、裏切りの原因であることには変わりなく、彼らの友情ドラマからは無視されて除外される。女が意図的に邪悪であれば、法によって裁かれるので、内面の葛藤劇にはならないのである。


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