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水田宗子

幕間

論文指導

2018/03/30

彼はドイツからその年来ていた友人の研究者に私の論文を評価してもらっていて、そのコメントがいつも参考になった。ニューイングランド出身のイギリス系の学者とゴシック文学の歴史を持つドイツの研究者の意見はかなり大きく違っていて、私はむしろドイツ研究者の見方の方に同感することが多かった。彼らが私をそっちのけで論じ合っている姿は今でも目に焼き付いている。若い彼らにとって(といっても二人とも私よりはかなり年上でおそらく40代だったのではないだろうか)、論文指導は論争の機会ともなり、新たな思考を導くことにもなったのではないだろうか。きっと、だからこそ彼は私を覚えていてくれたのだ。論文指導は私にとっては、自分の思考を相対化し、異なった視点から考えるかけがえのない経験であり続けている。


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