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水田宗子

幕間

御礼「マルチメディア朗読、ダンスと座談会の夕べ」

2018/09/26

 

 9月23日の与謝野晶子生誕140周年記念「マルチメディア朗読、ダンスと座談会の夕べ」が成功裡に終わりました。会場を満席に埋め尽くしてくださった、遠方からもいらしてくださった皆様ありがとうございました。
 野口あや子さんの朗読は経の声明のように聴く者を異次元へ引きずり込み、倉知可英さんの踊りは500枚の白い紙を静かに撒き散らしながら始まり、次第に身体の動きが激しくなり、しまいには乱れた髪で紙をかき抱きながら狂ったように身体がそこに埋もれていく。黒い髪と白い紙、 官能に生きることと書くことの狂気が声明の中で展開した。
永方佑樹さんの朗読は晶子のよく聞きとれない歌うような肉声と詩人の晶子の短歌と文章の朗読、そして明星社があったという渋谷道玄坂の一角の映像が重なり合って、テープを通して届く過去の声、 舞台の四方から響く詩人の声、場所の記憶が混じりあう立体的でかつ異次元の世界が皆を魅惑した。舞台の永方さんはまるで黒子、あるいは黒髪でよく顔の見えない巫女のように見えた。若い世代の与謝野晶子の受け入れ方は視覚的で、デザイン性に富んでいることにも感嘆した。「ミダレガミ」の記号性の新たな解釈が新鮮だった。
 座談会は第一線で活躍する短歌作者で与謝野世界に詳しい論客の阿木津英さんと松平盟子さんの晶子作品の読みと解釈に、新しい晶子像と世界が開かれたことを感じて、時間があっという間にすぎた。レセプションでは中国成都から参加した詩人Li Wuenyiさんの詩と踊りが披露された。ジャンル、声と文字と身体の動き、過去と現在、土地と場所がクロスし、異なるものが混ざり合う無時間の空間が倉庫ギャラリーに出現していた。後片付けをして、椅子がしまわれた空の空間に立つと、まるで役者の退場した能舞台にいるような感じがした。


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