ページトップ

水田宗子

幕間

平田俊子さん「無駄」

2019/02/6

平田俊子さんの「無駄」(「カリヨン通り」18号掲載)は、平田俊子の表現世界を巧みに表している好きな作品の一つだ。
「雨女」で、「運が悪く」て、無駄足ばかりしている人生、それを日常の特別でもない一日の出来事として描く。
生きることは無駄なことをする時間でもあるという実存思想が、へまばかりしているペルソナの行動に託されて表現される。無駄なことでも懲りずにまた同じことをする。二度や三度では達成できない小さな欲望、たとえば入りたい店で欲しいものの買い物。そのうちに無駄なことだからしたかったのかもしれないと、欲望さえ不確かになる。
目的がわからなくなっても、結局は「「どっちでもいいかもしれないな」、と独り語ちしながら終わるこの詩の醍醐味は、平田文学世界の現実と思想の空間、日常生活と本質的な存在の意味の世界が重なり合い、その猿回し的な語り手の役割を、どじで少々滑稽だが真摯なペルソナがしっかりと表現テキストに組み立てているところだろう。


SNSアカウント