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水田宗子

幕間

「フェミニズム批評から見えてくるもの」 水田宗子責任編集『[新編]日本女性文学 全集 第10巻』 書評 長谷川啓

2020/05/8

本全集は全12巻にわたる近代の出発期から現代までの女性文学を集成した日本ではじめての〈女性文学全集〉である。

第10巻は水田宗子の編集と解説によって、フェミニズム批評から見えてくるものは何かをもっとも明らかにしてくれる出色の1巻だ。

戦中から敗戦後にかけて自己形成し、1960年代以降に活躍した倉橋由美子・河野多恵子・大庭みな子・富岡多恵子・高橋たか子・三枝和子・岩橋邦枝・田辺聖子の作品を収録。

これらの作家は新憲法の男女平等思想や世界の新しい思潮を享受しつつ、家父長制の社会・家族・結婚制度における性差の現実との苦闘を余儀なくされた世代である。第二波フェミニズム批評の旗手水田氏は、彼女らの文学表現の深層には性差文化のディストピアが埋め込まれ、ジェンダー構造の破壊と鋭い批判を目指す、近代小説のアヴァンギャルドだと指摘。

男性主体の批評では見えなかった女性表現の深い闇を解き明かし秀逸である。

 

六花出版、2019年9月

定価・本体5,000円+税

 


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