1991/03/15
出版社: 講談社 (1991/03)
水田 宗子 (著)
<本の紹介>
過去一世紀余にわたる日本と英米の女性文学の振幅ある軌跡を跡づけ、性差の文化解体
後の新たな問題まで論じた画期的な評論集。本書の最大の特色は、近現代女性文学の軌跡
を、「狂気」という視座から分析した点であろう。例えば、女性文学が女性の自我と表現
という問題に正面から向かい合った時、「狂気」をかけて戦わなければならない対象は、
社会との葛藤よりも深く父権制度にからめとられた内面と言語であったという指摘は創見
に富んでいる。また、女性は「制度」によって創られるばかりでなく、「制度」を支えて
きた存在でもあるという両義性の指摘もなされ、ジェンダー概念を取り入れたフェミニズム
批評の優れた達成と高く評価されている。(HI)